>太陽光発電は投資
新築やリフォームを検討している方で、一度は頭をよぎるのが、太陽光パネルを屋根に載せるべきかどうか、だと思います。確実に儲かるからやるべき、なんてチラシやサイトがある一方、「19年問題」や雨漏りリスクなんていう不安要素もあり、どうしていいのかわからない、そんな方は多いのはではいでしょうか。
住宅用太陽光に「19年問題」 売電価格下落懸念、普及足踏みも
http://www.at-s.com/news/article/topics/shizuoka/532498.html
となると、アドバイスとして専門家の意見、というのを欲しいという方もいるとは思うのですが、太陽光パネルに関しては、私の意見しては「よくわかりません」と返答することにしています。
お前は建築の専門家じゃないのか、ふざけた答えを出すな、と思われる方もいるでしょうか、そういうスタンスなのには理由があります。それは、太陽光パネルは結局のところ投資だから。
家を建てるときやリフォームをする時、太陽光パネルは必ず載せなければならないのかというと、そういうわけではありません。(太陽光パネルが必須な場合もありますが、それは後述します。)
たいていの場合は、必要に迫られて太陽光パネルを検討するのではなくて、「儲かるか儲からないか」で太陽光発電をどうするのか悩まれているはずです。つまるところ、太陽光発電に手を出すかはどうかは、株を買うとか投信を買うとか国債を買うとかと一緒のカテゴリーなのです。
太陽光パネルは儲かるのか
となると、儲かるか儲からないか、という話になってきます。この計算に関しての結論とすれば、「たぶん儲かるはず」という答えになります。たぶん、とつけたのは、未来がどうなるかなんて誰にもわからないから。
例えばの例として、6Kwの太陽光パネルを載せた場合で簡易な計算をしてみます。あくまで簡易な計算です。実際の数字とは多少離れてることはご了承ください。
1kwでの年間発電量を1000kwとすると、6kwの容量で年間6000kw発電することになります。
このうち、資源エネルギー庁の統計では3割が自家消費、7割が売電ですから、売電するのは年間で4200kW 、2019年の買い取り価格は24円となっていますので、4200×24=100,800円。年間売電価格はおよそ10万円となります。
経産省の統計によると、1kwあたりの設置コストがおよそ35万円ですから(あくまでも統計上です)、6×35=210万円。210万円を10で割ると、21年で元がとれる、くらいの感じです。
この計算上、自家消費分の三割は除いていますが、こちらには太陽光パネルのパワコン交換費用、パネルメンテナンス費用、あとは住宅ローンの上乗せ分といった太陽光にかかわる諸費用をみている、と思ってください。
つまり、利回り商品としては、およそ5%くらい。これをお得だと感じるか、そうでもないとするかは、結局のところその人の受け取り方次第、ということになります。
と、いうことを書いていたら状況が変わってしまいました…
太陽光買い取り、半額以下へ=20年代半ば目標、国民負担抑制-経産省
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018091401128&g=eco
テレビのニュースで報じられたので知ってる方も多いと思いますが、家庭用太陽光発電の買い取り価格が2025年以降は現在の半額以下になることがほぼ確定しました。
2025年というと今から7年後になるので、なんだ今は関係ないじゃないかと思われる方もいるかもしれませんが、ものすごく関係します。
家庭用太陽光発電の買い取り価格は10年固定ですから、今契約しても10年後の2028年までは現在の価格ですが、それ以降は半額以下になるわけです。
6kwのパネルで年間6000kw発電だと、売電価格は10万円から4万6千円まで減ります。
太陽光発電で儲かるぞ、とはちょっと言えない数字ですよね。。
太陽光パネルのデメリット
もちろんですが、太陽光パネルにはデメリットもあります。
まずは見た目。太陽光を最大限生かそうとすると、南面に5寸勾配の片流れ屋根なんて形の家になりますが、これはとっても非常にダサい。どれだけ高級な外装タイルを使おうが、塗装をしようが、どうにもできない。だって、第三者がみれば、単なる太陽光パネルがいっぱい載っかっている住宅にしか見えませんから。他の人からしたら、元が取れるといいですね、という感想にしかなりません。
見た目以外のデメリットとしては、雨漏りリスクが増える、地震のときに屋根荷重が増えるので損壊リスクが増える、というのもありますが、これは施工側できちんと対処すればいいので、問題としては挙げたくはありません。
ただし、新築ではなくて既存の家に太陽光パネルを載せる場合には、雨漏りリスク・地震リスクに関しては慎重に検討をしなければならない要素です。
太陽光パネルと屋根との間に、虫や鳥が住み着くこともあるらしいですが、こればかりは運次第としかいいようがありません。。
そして、太陽光発電の最大のデメリットは「政治リスク」です。太陽光発電はすべてが政治によって決まります。買い取り期間を決めるのは政府、買い取り価格を決めるのも政府です。住宅向けの太陽光発電においては、需要と供給でバランスを取る市場主義の要素はまったくありません。儲かる儲からないを決めるのは、政治家であり官僚です。
計算上はおよそ20年後には元がとれることになりますが、政府が保証してくれるのだから間違いないと思うか、20年もの間はたして彼らが梯子を外さずにいてくれるだろうかと疑念を抱くかは、政治家や官僚をどのくらい信頼できるのかにかかっています。
さらなるデメリットとして、売却益が発生しないということが挙げられます。
株や国債、REITやアパート経営なんかでもですが、投資というのは、売却して現金化できる商品が一般的です。株に投資をしている人は、株をもっていて値上がったから売ってしまおう、もしくは値下がりが続くから損切りで手放そう、みたいな感じで株を売買しているはずです。(投資という観点では、配当金で利回りをみるのが正しいのですが、配当金目当ての人は実際あまりいないでしょう。株主優待目当ての人は多いかもしれませんが)
もしくは利益関係なく、どうしても現金が必要になったから手放す、なんてことも十分あり得ることです。
しかし、太陽光パネルはそれができません。地べたに並べている産業用パネルであれば可能かもしれませんが、自宅の家に載っているパネルを他人に売るわけにはいきませんよね。と考えると、利回り5%の商品といえども、他の投資商品では「倍になった」と考えられるところが、太陽光パネルの場合「元がとれた」という感覚になるということです。
太陽光パネルを載せる理由
投資商品として魅力がなくなった太陽光パネルですが、それでも載せる理由はいくつか存在します。
1.自然エネルギーを普及させたい
資源の乏しい日本にとって、石油や石炭、そしてウランに頼らなくていい太陽光発電は魅力的な発電方法です。
日本社会の未来を明るくしたい、もしくは原発ゼロの社会にしたい、と思う方にとっては、太陽光パネルを使うことはわずかですが貢献になると思います。
2.災害に備えたい
今年も北海道でおおきな地震があり、大規模な停電が発生しました。停電時、太陽光パネルは非常用の電源として有用です。
そういうった大災害に備えとして、自宅に太陽光パネルを載せておくというのも1つの方法です。
3.自家発電時代に向けて先行投資したい
近未来か遠い未来かはわかりませんが、家庭用蓄電池の容量が大きくなり、かつ値段も現在より大幅に下がったときは、自宅で発電した電気を自宅で消費できるようになります。
自宅で電力をすべて賄えるとすれば、市場とまったく関係なく政府が勝手に決める売電価格に右往左往する必要はなくなります。
4.ZEH住宅を建てたい
ZEH住宅には太陽光パネルは必須です。ZEH住宅を建てたい、ZEH住宅を建てて補助金が欲しい、という場合は太陽光パネルを載せる必要があります。
ただし、ZEH住宅の補助金は100%もらえるものではないですし、年々補助金額が減少しています。
太陽光パネルの未来
太陽光には実際のところ投資商品としての魅力はたいしてありません。だからこそ、国は国策として買取価格を固定して、多少強引にでも太陽光を普及させようとしています。
政府としては、住宅で使用する電気くらいは太陽光パネルで自家発電自家消費できるようになって欲しいのだと思います。日本という国は資源が乏しいですから、どうしても国家政策や外交戦略が原油等の資源に左右されます。一部の政治家が原発に拘っているのも、それが理由でしょう。(まさか核物質が欲しいからではないとは思いたい)住宅の電気が太陽光で賄えるようなれば、輸入する原油は減らせますから。とはいっても、太陽光パネル市場で日本企業がほぼ壊滅したので、太陽光パネルも輸入することになるのですが。
現在では電気を溜めるための蓄電池が普及してないですから、現時点においては太陽光パネルが日中に発電した電気は売る以外の選択肢しかありません。
しかしながら、自家発電した電気を自宅で消費できるようになれば、太陽光パネルは投資商品から資産に変わります。
例えば日中の電気をすべて電気自動車に充電できるようになれば、太陽光パネルは売電以外の用途に使えることになります。イーロン・マスク(PayPal創業者・21世紀最大のギャンブラー)がテスラ社を設立して電気自動車に資金を突っ込んでるのは、この未来を観ているからでしょう。経産省が提言にあげている上位ZEH住宅(仮称)も電気自動車への充電を標準としています。
ただし、この考えにも欠点があって、通勤で日常的に車を使う人は、自動車が家から離れるから平日の日中に充電できないんですよね…。日中に車を住宅の太陽光で充電できるっていう考えは、休日にしか運転をしない都内に住む人間の発想です。国家公務員が住んでいるのは都内でしょうから、地方とは隔たりがあるのは仕方がないのかもしれませんが。
平日に電気自動車の充電が行えない地方住まいの場合だと、電気自動車が普及して、リチウムイオン電池が安くなって、一日分の電気が賄えるくらい大容量の蓄電池が普通に買えるようになって、各家庭に普及したときが、ホントの太陽光発電のスタートなのかなと思います。
先行投資で太陽光パネルを今載せるのか、それとも蓄電池普及まで待つのかは、個々の判断になりますが、それほど難しく考える必要はないと思います。載せたいと思えば載せればいいし、載せる必要ないと思えば載せなくていい、そんなスタンスでいいのではないでしょうか。これから太陽光パネルを載せる方は、元をとろうとか大儲けしようといった考えではなく、未来に投資をしているという気持ちで太陽光発電と向き合っていただければと思います。そういう心積もりであれば、売電価格に一喜一憂することもないですし。